林道を詰めていくと間もなく丸石沢の橋が見えてくる、かつてはここに林道のゲートが有った。
丸石沢ゲート手前に車を寄せて独りキャンプしたのは随分前の事、夕方丸石沢でほんの少し毛鉤を打った。

真夏の深い谷間の岩魚は真っ黒な険しい顔をして毛鉤を襲う。
流れに身を屈めてのチョウチン釣り数尾の岩魚を得てその晩は楽しかった、
独り酒盛りはなんとも優雅でのんびりしたもので沢の流れ下る音さえも気にならない。

焚き火を眺めぼんやりしているとなにやら後ろのほうに気配がする、振り向くとその瞬間ガラガラとゴミ袋が走り出した。
その時とっさに出た言葉は、(ちょっと待てそのゴミどうするの)だった。
いたずらの主は狸、数メートル追いかけ食べかけの岩魚と交換した。
焚き火を眺めていたのは狸も一緒だったとはなんともおかしかった。

翌朝車の下に置いたサンダルが一つ足りないので探して見ると橋の下に落ちていた。
昨夜の狸のいたずらに違いない。

Script3-3A

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