一期一会
熊の子
今期最後のキャンプでの事、庚申川の赤岩沢付近を遡行中若者二人とであった。
斜メの滝上流の小さな落ち込みに熊の子が沈んでましたよ・・・・・
熊の子を探しながら斜メの滝上流を行くがそれらしきものも見えずテン場に到着。
独りだけの極上のテント場。キャンプの準備をし夕方までの時間をのんびりと過ごす。
遠慮のいらない独りだけの気侭な時間、頭上に広がる樅の枝振りを眺めながらビールを空ける、3年前はこの樅ノ木の根元には
アカモミタケやタマゴ茸が面白いように生えていて喜ばせてくれたのに・・・・・
今年は茸の気配が皆無、焚き火の煙にむせながら下方を眺めると白い大岩の上に黒い点が見えた。
はて・・何だろうか・・・・
先ほどまでは無かった不思議な黒い点を確かめに流れに降りていった、するとそれは何と熊の子。
先ほど降りていった2人の釣り人の仕業だろうか。今しがた引き上げられたのだろう、黒い小さな全身からは
水が染み出し幼児のその真っ黒な毛は艶やかに光っていた。
赤岩沢であった若者が言っていた熊の子だろう、見るとその子熊の目は青く光り爪は鋭く・・・初めてお目にする野生そのものだった。
胸元の白い飾り毛、ほんとにツキノワグマ
ともあれ岩の上に据え置く事も出来ず乾いた砂場に埋葬、
熊の子はくるりと丸く砂穴に収り、それはまるで自分の意思でそうしたかの様だった。
乾いた落ち葉を布団代わりに被せ砂を載せ、大文字草を手向けに熊の子との一期一会・・・・。
今年最後の焚き火に岩魚が無いのは寂しかったが、マ〜しかたない・・!。
連休で一対何人の釣り人が往来した事だろう。
焚き火を眺め横になり酒を飲み、独りの時間を味わう事がどんなに幸せな事だろうか、終には酔いつぶれ
明け方のテントを打つ雨に起こされた。
庚申川は珍しく土色に変わり小沢は樋状に滝を落とし、然もすると昨日埋葬した
熊の子が今、荒れる庚申川を眺める自分なのかもと思ってしまった。
昔の人の残した安全な踏み後を辿り、赤岩沢出合まで流れに足を入れることも無く苔の道を楽しんだ。
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