舟石新道(岡田敏夫書、足尾山塊の山から)
舟石新道は昭和25年地元、足尾町の有志により舟石峠〜庚申山荘間の道が開かれたものだが
その後、銀山平〜一の鳥居間に林道が出来ため、利用者が少なく今ではすっかり忘れられた道になっている。
現在は完全に廃道化、ところにより深い笹藪があり道の体を要していない、併し指導表が方々についているので歩きやすい、
取り付き点に道の案内は無い。
舟石新道を歩く、08年の記録
*昨年3月、丸石沢支流の小沢から旧作業道路を通り笹見木沢源流部の湧水地まで。
(この時は事前の下調べもせずに入り込み作業道路だったとは知らず、舟石新道だと思い込んでいた。)
*2度目の探索は5月、旧作業道路はツツジの満開。
慣れ親しんだs沢右岸から1450mのコルまで、その先を少し行ったところになんとそこには
舟石新道の指標版が打ち込まれていた。
幻の舟石新道を確認。その後登山道の(舟石新道)終着点を確認し下山。
アカヤシオに被われた庚申山が素晴らしかった。
*
同月18日、旧作業道路から丸石沢本流の右岸に付いた杣道らしきものを通り、丸石沢にかかる舟石新道の横断地点を確認。
(塔の峰登山、1718m)
塔の峰下山後横断点に戻り返し登山道の始点を確認、山ツツジが真っ盛りの舟石新道だった。
*
同年、6月。
丸石沢本流を岩魚を追いかけながら舟石新道へ直登、横断点からs沢横断点まで。
草木の芽吹きが最高だった、カメラを忘れたのが残念。
*
09年10/4、眺望の良い所だけ、舟石新道を歩く。
旧作業道路からs沢横断点→丸石沢横断点→丸石沢左岸を下降→林道出合までの周回コース。
7:00前足尾のコンビニにより食糧の買い込み、ついでに熊の情報を仕入れる。
茸採りが一人熊に襲われ大怪我をしたとの事、新聞にも載ったそうで併し今年は案外熊の情報が少ないそうだ。
里に下りてくる熊が少ないのは山が今年豊作なのだろう・・・か?。
7:00過ぎ銀山平に駐車、登山者の車がゲート前に数台、やはり休日の庚申山は賑やかだ。
先を急ぐ登山者を横目にザックを
確認、用心の為に今回は爆竹を用意してきた。
一般の登山道と違い用心にこしたことは無い。
丸石沢左俣、その支流左岸に付いた旧作業道を登り杉の植林帯を
ジグザグに行くと、丸石沢本流を見下ろす鞍部に出るのだがそこで一休み。
狭い鞍部に腰を掛けこれから行く先を眺めていると昨年はじめて足を踏み込んだときを思い出す。
今年3月、この道は真っ白、風にあおられ頭上からは木立の雪が降り注ぎ何とも素敵な光景だった。
あ〜そりゃー、最高な一時だったよ。
だんだん深くなる靄に杉の林は青黒くほんとに不気味で、音も無く覆いかぶさる白い粒子はいよいよ体に纏わり付き
その粒子に同化した己の鼓動だけが高みに足を運んでいるようで・・・・・
数回来ただけのこの道を、なのに今はその時々の状況さえも楽しもうとしている。
地形図の1455mからの南尾根の下部を巻くように上がると唐松林の植林帯、この辺りは昭和43年、前橋営林署が管轄植林したらしく
作業道の所々に白い看板が立っていた。唐松林を徘徊、茸らしきものは何にもなく少し残念、少しは期待していたのにな〜。
(実はハナイグチを期待していた。)
作業道はかなりの部分かなり不明瞭、おまけに獣道が交差し時には立ち往生、前回残しておいた目印が役立ち
迷う事無くs沢の湧水地点にたどり着いた。
湧水はs沢の左岸5mほど高い木の根元から勢い良く湧き出しており緑の苔の中なんとも綺麗で、いつ来ても心和む場所でもある。
源流の滝を眺めながら食事、湯が沸く少しの間あたりを散策すると樺の朽ちた枝の中にシロナメツムタケが群生。
狙っていた茸では無いけれど採り放題に・・・思わず\(~o~)/・・。
s沢は湧水の水源より上流は伏流して見事なゴーロ状に変わり登山靴ではかなり歩き辛い、右岸の笹地に上がり
獣道を追って舟石新道の横断点を目指す。
湧水地点からわずかの距離で横断地点に到着するがその後目印が分かりづらく立ち往生、右岸の庚申山から派生する
尾根に登ればそのまま舟石新道に出られるのだが・・・・
とにかく道型は付いているのだし、その地点を何度か往復。
左岸に付いているはずの指標を探し目をサラにしていると
右岸からの涸れ沢を挟んで、その向こうに見覚えのある指標が陽に光っていた。
左岸尾根からs沢の、伏流帯横断地点の舟石新道は大きく蛇行していてしかも道は笹原に隠れた涸れ沢をまたぎs沢支流の
源流部に向け北上。
この辺りが一番迷いやすい地点だろう。
とにかく人の歩いた気配は皆目無く、笹原に残る獣の踏み後だけが前方に伸びていてなんとも足元が心もとなく不安で仕様が無い。
支流の滝をのっこしてようやく眺望が開ける、この辺りが舟石新道一番の絶景かもしれない、唐松の紅葉には未だ少し早くそれでもモミジや楓は盛りの色を見せていた。
時に腰までの笹に埋もれ芒の中に道が突っ込みかなり不安、時折休んでは笹の中から鮮やかなレモン色の茸、キヌメリガサを採取。
茸に夢中になっていると腰に下げた熊追いのベルが止み・・・・・その時だった。
至近距離から、フッフ、フッフーオッフフ・・・
クマだ・・心の中で叫ぶ、しかも子連れらしく2頭の声がする。動悸が口からはじけ出そうなくらい大きい。
とりあえずタバコに火を点けひとふかし、
その間も親子熊と思われる獣声が何かを漁っているのだろう、、
フッフ、フッフ・フッフフ・・・
ばらした爆竹の導火線を口元のタバコに当て点火・・パン〜〜
3本ほど破裂させたがそれでも小熊らしき小さな獣の鳴き声が止まない。
しかたなく爆竹の連発を2回、
獣の気配が消えたのを確認してひと安心。
道を塞ぐススキに思わず足が止まる、また熊がいるのでは・・・・・・。
塔の峰から南に延びた尾根の鞍部を道は東側に大きく回りこみ唐松の下、いよいよ笹も深くしばらく行くと
丸石沢の細流が現れる。
石積みの堰堤跡でひと休み、丸石沢源流部の二俣から下の凡そ30m程の滝を下降するのを嫌って左岸の斜面を
獣道を追って下る。
途中炭焼の古い釜跡を見るが・・・・・・
おそらく左岸にも炭焼の為の杣道が点在するものと思い、沢沿いを凝視していると何やらそれらしい道型が見えてきて
追って行くと簡単に大滝を巻く事が出来た。
その後点々と続く杣道の跡を追うのだが壁にぶち当たり沢に下る。登山靴での沢の下降ほど嫌なものは無いと実感。
両岸の狭まった函状のゴルジュに捉まり下降できずに困ってしまった、岩魚釣での事ならなんら気にも掛けないような場所なのにな〜。
少し戻り返し左岸を見上げるとガレたルンゼの上部に巻き道らしきものが見え、
おそらく鹿道だろうと思いながらも20m
ほど崩れる足元を気にしながら登り上がる。
切れ切れの杣道が又出現、今では余ほどの事でも無い限り人は歩かないだろう。
足尾の山中、到る所に生活の跡が有り少しも寂しさを感じる事は無い、ただ夕闇の迫る今のこの時間だけが怖い。
杣道の登り上がった処から下を除くと左岸からは涸れ沢が落ち込み、右側には丸石沢本流が静かに滝を落としていた。
左岸の涸れ沢に下りるにはどうしたら良いのか・・道は何処だ・・・・
道は足元右側の岸壁に沿ってなだらかに付いていた様だ、今は落ち葉に埋もれ隠れてはいるが一枚岩のその岩肌に刻み込んだような痕跡が。
涸れ沢に下り立ち、薄暗いその沢の上方を見るとやはり其処にも治水の為か石積みの堰堤がいくつか有り今は、苔に被われた
自然の山肌に変わろうとしていた。
目の前には杉の植林帯が広がり見覚えのある小道が延びていた。人里近く、やはりついさっき迄見る事の無かったゴミが
いくつも散乱していて安心した様なそんな気持ちにもなるのだが・・・やはり疲れた・・!。
庚申林道出合着・・16:00。