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この日3度目の舟石新道の探索、鶯の声で目覚めるが天窓を流れる雨の雫で予定変更もやむをえないのかと
半ば諦めていたら7時過ぎには陽も出て来ていそいそと出かける。
日足くトンネルを越えた神子内川は釣り大会なのだろう、臨時の遊魚券の販売所が川原に立ち上がり辺りの道路には釣り客の車で
ごった返していた、見ればいずれも年配の年寄り連中ばっかり、若いのは見かけなかった。
コンビニにより行動食の仕入れ、ついでに遊魚券(年券)の購入。
銀山平の駐車場は既に満杯状態、何とか割り込んで急ぎ丸石沢から右岸尾根に取り付き杉の植林帯までの急坂を
ヒーヒーいいながら登っていく、前回まで2度の探索で丸石沢の源流帯に通じる途切れ途切れの杣道を確認済み、
今はほとんど鹿道と変わらぬ様子だが良く目を凝らすと確かに人の歩いたものと思えるのだが。
高度計は1102m、丸石本流の水音さえ聞こえない、谷筋にせり出した子尾根をトラバース、シロヤシオや三つ葉ツツジに目を取られながら
杣道なのか獣道なのか判らぬその道をいく。
テラス状にせり出した大岩に腰を掛け休憩、既に丸石沢も目の下に流れ道もまっすぐに流れに下りて行っている、
ひょっとしてこの道はたまに訪れる釣り人の帰り道なのかも知れない・・・・・・・・・・
なんか得したようなそんな気分だった。
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丸石沢に下りると目の前には凡そ30メートルほどの2段ナメ滝が緑のコケを両脇に抱えしかも中断には
紫の三つ葉ツツジがおだやかな流れに覆いかぶさっていて綺麗だった、乾いた岩肌を慎重に登る、沢靴で来なかったことを少し後悔
するが水に濡れない沢遊びもたまにはいいもんだ。
上りきると丸石沢は2又に分流、まっすぐ本流を100mほど登るといきなり舟石新道が横断、擦り切れた赤いリボンや
赤いペンキのマーク、おまけに打ち付けられたブリキの指標など等・・・・etc...
国土地理院の地図を見ると丸石沢の流れは1231Pの直下までしか記入されておらず舟石新道の横断する地点より上流まで
水流はあり舟石新道の給水地点としては最高だろう。
新道の横断する高度は1364m、新道を庚申山方面に進み地図上の1455Pの直下から急坂を登り1738Pの塔の峰を目指した。
時間も早いので新道を庚申山方面に向う途中2本の支流を渉り尾根を回り込むように行ったところから
急坂をよじ登り尾根上に出る、アカヤシオ、豆桜が咲き乱れリョウブのほかには白樺の樹林、足元はやわらかく
とても歩きやすかった。
上りついた場所にリボンの目印を付けそのまま鹿道を追って1738Pまで、尾根上は刈込まれたように笹丈も短く
おまけに花盛り、これで視界さえ良ければな〜〜〜〜〜。
鹿のヌタ場で角を一本拾う、笹原からは驚いたように鹿が2頭飛び出しびっくりした、それにしてもこの場所は何とも心地好い。
塔の峰(1738P)で高度計を合わせのんびり昼食、ガスの切れ間から庚申山や皇海山が姿を現し思わず感激。
松木方面は良く晴れていて仁田元沢の切れ込みも良く見えた、それにしてもここは気持ちよい場所だが鹿のクソだらけ
で腰を下ろして寝そべるのにはちょっと気を使う、う〜〜くさい!。
13時前に塔の峰を下山、だんだんガスがひどくなってきてアカヤシの群落に目を取られているうちに南側に大きく道をはずし
危うく笹見木沢の南側断崖に下りていくところだった、元の尾根に戻りかえし鹿のヌタ場を越して
舟石新道に戻りついた時にはガスも晴れ不安な気持ちも治まった。
途中丸石沢左岸尾根(1363m)付近に銀山平方面が良く見える見晴場が有り (ただの大岩)景色も最高だった、この後舟石新道はツツジと鳥のさえずりが延々と続いた。
新道は1238mの小尾根から地図上の1528pから北東に伸びた尾根の底を巻き込むように北にジグザグと落ち葉の中を
1133pに向けて樹林帯を抜けていた、この時季は明るく歩きやすいだろうが夏場ならどうだろう時折抜け落ちたブリキの表示を
打ち直しながら進む。(1140m辺り)
振り返ると
逆方向からは殆どブリキの表示も見えず獣道なのか登山道なのか判別できず持っていたリボンを枝や立ち木にまいて来た。
広くてなだらかな斜面、時折古いビール瓶やら一升瓶やらが見られだんだん人臭くなってきたがそれでも直近のゴミは何一つ無く
何もかもが新鮮だ、新しいものといえば自分で巻いた目印のリボンだけ・・・・・・・!。
ともかく目を凝らして歩けば迷うことも無く安心な道には間違いない、道はだらだらと落ち葉に埋もれ長い下り坂にかかりそれでも幅は1m
と広く下る分には壊的だ。
深い新緑の中、足元は厚い落ち葉・・・・・
あれ〜〜何か座ったような、落ち葉の道が丸くへこんでいた、それも2箇所。
その場に同じように尻を落とし試して見たが同じように丸くはへこまない、かなり体重のある物がこの場でくつろんで居たのだろう、
熊か〜・・・・・?
道はだんだんと下りになり涸れ沢を巻いたり渡ったりと忙しないが杉の植林帯が目の前に広がると細い流れが現れ
おまけに車の音さえ聞こえ出した・・・そろそろ終わりかな〜。
石積みで被われた小沢を過ぎて行くと道の真ん中に舟石〜庚申山と記された杭が立っていた、
いつ誰が立てたのだろう、
杭を見つめながら探していたものがここに有ったんだァ・・嬉しさがこみあげて来た。
笹見木沢源流の1462Pにも同じ杭が立ってはいるが文字は消えて何も無い、ただ潅木の枝に
舟石と打ち込まれたブリキの表示があるだけだった。
やはりこの道は既に廃道、やたら入り込まれて事故でも起きたなら助けようが無い、知る人ぞ知るでやはり良いのだろう。
舟石の入り口にもやはり道を示すものは無いし庚申山登山道にもやはり無い、あえて付ける必要性も無いが
それにしても勿体無い、昔この道の入りには舟石村があったという、その痕跡は到る所にあり人の立ち去った後にも水仙の花が青くノビ
庭木が伸び放題、つつじの大株さえそちこちに見られる、山肌には放棄された生活道具が散乱し
田畑の跡もはっきり見て取れる、舟石新道もこの地で育った子供達の格好な遊び場所だったに違いないし大人には生活の道路だったろう。
銅山の煙害からこの地を出て行かざるを得なかった人たちは今健在だろうか、果たして懐かしく訪ねることが出来るのだろうか。
舟石新道はその石段で区切られた田畑にいきなり合流、その下には水仙が既に花を終わらせ茎葉が青々と伸び人家の裏庭を想像させてくれる、
その場に佇んでいるとかつてのひっそりとした光景が広がるようで・・・・・・・何かな〜〜〜!。
舟石新道を行くpart.3 終わり