念願の早月尾根である。 2011/7-24〜27日までの事

番場島のキャンプ場にテントが一張り、人影なし。
立山川の穏やかな瀬音を肴にテーブル椅子をならべ、クーラーボックスから缶ビールを一缶・・グビィ。
本来、私の山はこんな程度で結構まんぞくなのだが・・・・

広いキャンプ場の芝地にテントを張り傍らの立山川でF・Fなんぞを楽しんだほうが・・・来年はそうしようかな・・!。
剣岳を正面に青く澄んだ水面に打ち込む毛鉤、とびだす岩魚の感触はさぞかしなもんだろうか。
で・・・早月尾根を暗い内に登るのだが。
いきなりの急登、暫らく登ってまたぞろ急登・・・途中の立山杉の巨木を見送りまたぞろ急登、急登・・・。
驚くほどの太枝を広げた立山杉の輪郭が急斜面に覆い被さり見上げるほうの首が痛いくらい、
とにかく単調な登り、陽が高くなったらどうしよう・て・なもんで・・いやになるほどの急登が続く。
花も何もなし、咲いても居ない、下山者が・『頑張ってー・・ンメートル地点までもうすぐですよ〜』なんぞと言われても 発する声も出ない。
地形図1920.7m地点の三角点で座り込む、空は真っ青・・・少し舐めてかかったかな〜と若干の弱音。
小さな池塘に遊ぶ蛙の波紋が涼しげでなんとも和む。
御前橘、キヌガサ草、イワカガミ等の花々が目を捉え滞留する時間がいよいよ延びて後続の登山者が数人も抜いて行った。
・・・・・時間も未だ早いのに・・・彼らはどうしてそんなに急ぐのだろう・・・・・などなど・・ブツブツ、独り言・・
またぞろ急登、急登、ロープのついた砂のガレ場を登り尾根に出るとまたぞろ急登・・・で嫌になるのだが
地形図を覗き四方を確認するのだが・・なんとも!どれがどれだか、いやはや・・天気が良いのだけが救いで眺めは最高。
ま〜この際、山名などどうでもよろしいのだよ・と、やはり独り言で納得する。

早月小屋(伝蔵小屋)到着(午前11時前)
小屋を見下ろす2224mのピークに出ると何の事は無い、白いガスに被われまるでホワイトアウトの状態。
足元に咲くイワカガミが白いトバリに浮き立ち、本日終点の景色にしては・・でもま〜こんなものかで納得。
とりあえずビール、ビールで小屋に駆け込む。
缶ビール(500m)800円
水2リットル、800円
テン場の使用料、一泊500円(2泊したので1000円)
宿泊客や下山者のたむろするベンチに腰をかけ、あたふたのビールタイム・・・・まんぞくー

登山道脇のテント場。
小高く残った雪渓にビールと水を埋め込みテントの設営、と言っても一人用だから簡単なもんだけど、 とりあえず宿を確保。
併し時間が早い、剣岳の上空には怪しげな雲がのさばり、今にもドシャーと降らすぞーとばかり。
午後3時過ぎまで昼寝、朝3時過ぎ入山で小屋到着が11時前。何ともはや、のんびりとした事か・・・・
夕方近くになるとテン場も賑やかになって単独者は案外と肩身の狭いような、変な時間でもあるが・・・
併しヤッパリ降って来やがったよ。
それもとんでもない大粒の雨、念入りに掘った溝が簡単に埋まるほどでテントの入り口はほぼ水浸し、ア〜ァとか細くうなる。
雨も上がって食事の準備、だけど小雨が・・・・・
ガソリンコンロはやはり冬山だな・・・とか何とかブツブツ言って飯の準備、遅くなりテン場には子連れ一組到着。
熊谷からとかで小学生の男子2人、しかも低学年、いやいや、居るもんだねーと感心する。
そのほか新潟からのヤマンバ2人、アレッ・今はそうだ・山ガールて言うんだわ・・・・(テントが賑やか)
伝蔵小屋前では宿泊客が雨上がりの夕日を眺めギャーギャー、夕日の沈む富山湾は当然見えないけれど真っ赤な太陽がとても良かった。

いよいよ剣岳本峰へ・・
明け方までの雨も上がり大展望の期待も空しい剣岳山頂へ向う、潅木の急斜面を抜けると漸く登山道らしく・・・やれやれ。
ハイマツ帯に変わり狭い尾根が雲の上に伸びていて・・しかも景色はまるで駄目。後に続くおばさん登山家の群れがうるさい。
2600m地点の標識 登山道は歩きやすく何も心配なし、足尾の藪尾根に比べたらこの道はまるで舗装道路。
池ノ谷側の登山道脇にはシナノキンバイ、チングルマ、イワウメ、ツガザクラ・・(いろいろ咲いているがあと判らん) 等の花が全く賑やかで飽きさせない。
今日もヤッパリ、ミチクサのしっぱなし、気が付けば後から続く登山者は居らず白いガスの中で一人ぼっちで辺りは静寂・・
でもま〜これが好いのだよ・・と頭の中での独り言が・!。
2800mを過ぎ岩稜地帯に、相変わらずのガスでまるで高度感なし、下が見えないから怖さもまるで無い。
なんともぬるいような登山道を鎖に捉まりロープに引き上げられ行くと別山尾根との分岐、よく見ると何とま〜・・ 下からは黒い蟻の群れがゾロゾロ這い上がってくるような感じで、いっぺんに場違いで居場所を間違えたかのような気にもなった。
剣山神社の屋根がガスの中に浮かんで、辺りに座り込んだ登山者の群れがまるで海獣の群れの様でもあり学生達の賑やかに騒ぐそれは トドやアシカのざわめきにも・・そうなふうに見えたのだ。

学生に頼んで2枚の記念写真を撮ってもらい 山頂で暫しの天候待ち。
ガスの切れる事を期待して30分ほどいたがますます濃くなるばかりで・・見事に嫌われたワィ!。
学生の・・おっジサン、3000mに2m足りないなんてねー・・・すごくね〜
と・はしゃぐ声が妙に頭に残り、山頂の山名版が白いガスの中に際立っていたのがなんとも印象深い。
深いガスのなかまたぞろ一人、時折鳥の声が聞こえるだけで静寂、2800m地点で雷鳥と出あう、雷鳥を見たのは本当に 25年ぶりか。
驚く事にこの雷鳥は1m近くも側によって来て逃げる様子が無い、さー上手に撮ってね〜・・・ハイハイと独り言。
2600m付近の雪渓で遊んでしまう、
勿論池ノ谷側に張り出した雪渓はトレイルになっているのだが壷足で歩くのもなんだからと、 しゃがみこんで靴スキーを楽しんだ。
地形図2614mピークの肩の広場に上り立山川の細い谷筋を眺る、番場島から小屋までの稜線を指で追いながら見入った。
併し此処で見てはいけないもの見たような、おぞましいような・・・・・
若い男性の登山者が、徐に取り出したのは日焼け止めのクリームなのか・・はたまた、ドウラン・・
キョウビ、日焼けした若者は差別の対象にでもなってるのかしら・・ブツブツ・・ブツブツ・・何だかなー・・独り言である。
ハイマツ帯を過ぎまた急な潅木帯を下りビールを得にいそぐ、この青空の下で飲むビールはいかがな味か・・・

二泊目のテン場にて
子連れの登山者も新潟の山Gも単独行のテントも既に撤収、残ったのは60年配のソロに己のテントのみ・・・
テン場からの眺望は小窓尾根や赤谷山方面、
ミミズクの顔を乗せたような小窓尾根だけが昨日今日と終日曇ることなく早月尾根に沿って流れている。
きっと剣岳の思い出は小窓尾根のミミズク様かも・・・知れね〜な!。

上市から歩いてきたと言う剛の者が隣に赤いツエルトを張り明日からの縦走に備えていた。
上市から46号線→333号線→番場島→早月尾根→伝蔵小屋・・・・・・いや〜〜ただすごいの一言である。
翌日からは剣沢に下り一泊しその後は読売新道に出て穂高縦走→新穂高→高山・・・・・
この剛の者と60代のソロのおっさんと3人での酒盛りを歓迎してくれたのは、いや〜まとわりつくヌカカ。
ひとしきり個々の山の話をし騒いだ後はテントで快眠。
目覚めると既に外では宿泊登山者の一行がざわざわと登山道に向っていた、隣の剛の者も出発の準備中、
昨夜の礼を言い無事な縦走をと伝え見送った。
それにしても徹底した軽量化である、30Lのザックに非常食、雨具、着替え、ツエルト、本・・・・
して見れば自分の荷は何と無駄な・・・
彼の30Lの倍、60Lのザックに〆る最大の重量は何と酒、イヤーいや・・アルコールなくして何の楽しみぞ・・だよ。
座して虚空を眺め星座を数え西の空にやがて飛ぶ己の姿を想像するのも、酒なくしてなせるものか・・・とか何とか・・!。

午前7時下山開始、快晴。
痛み出した左足を庇いながら急坂を下る、共に出発した年配の登山者の姿はとうに見えずすれ違うのは日帰り登山の健脚者のみ。
松尾平の平坦地(標高1000m付近)を過ぎ広葉樹の急坂を下ると、 立山川の水音やアカショウビンの甲高くも澄んだ鳴き声が歩を止める。
暗闇の早朝では目にすることが出来なかった碑文が登山道脇に据えてあった。

・・・・・試練と憧れ・・・・・・
----1997年12月31日の夕方ニュースは
剣岳早月尾根で東京の岩峰登高会パーテーの3人と新潟の三条山岳会パーテーの2人が、
稜線上からの雪庇の崩壊によって池の谷(いけのたん)へ転落、1名が死亡4名が行方不明と報じた。
事故の概要は雪庇と思われた事故原因が実は雪崩だった、
思いよらぬ暖冬、豊富な雪山経験など気候変動という悠久の時間変化に比べれば余りにも短すぎる、、、云々。
/////////////// (参照文献、山と渓谷社、ドキュメント雪崩遭難 阿部幹雄) ///////////////

夏場の深閑とした登山道を行くのに、積雪の冬尾根など凡そ想像する事もできない。
碑文の元となった尾根を行くには少なからず慎重になった、まして稜線左池ノ谷側には7月後半と言えども豊富な残雪が残り ガスに巻かれ視界の薄くなった単独行動は危険そのもの・・・・。
とあれ、夏場の早月尾根はよく整備された何処にでもある登山道でもあり、グループ登山であれソロであれ
伝蔵小屋までの標高差を楽しみのんびり行けば山行を充分に楽しめることだろう。機会が有ればもう一度来たいもんだが!。
・・・・・
午前11時前に下山完了。
汗でびっしょりの衣類を脱ぎ捨て立山川に飛び込む・・・いや〜〜ヒャッコイ。
缶ビールを冷たい流れぶち込み洗った衣類を車の屋根に干し、テントを芝地に広げ剣岳を見上げた。
芝生に足を投げ出しビールを飲むと登山などもうどうでも良くて、
やはり・・・立山川の岩魚と遊びこのキャンプ場で飲んだくれたい・・・という思いが強くなった。 そうしよう・・・・・・・来年は!。


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