・・・・・・・庚申山荘まで

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 雪山の道具をポチポチと揃えながらもどうにも山行の時間が取れない。
日曜日(17日)思い切って時間は遅いけれど粕尾峠越えで足尾に入った。
銀山平の駐車場には登山者の車は一台たりともなく変わりにユータンをしたのか轍が深く雪の中に刻まれていた。

時間は午前9時過ぎ、準備を整え凍りついた林道を庚申七滝方面に向う、林道の雪は鹿猟師の車にかたく押しつぶされ 歩きやすかった。
笹見木沢の出合カーブあたりから雪も深くなり山肌が白一色で眩しかった。
谷底の庚申川は所々に光る水面を見せてはいるけれども・・・・、轟く猟師の銃砲の破裂音が雪山の不安を一瞬忘れさせてくれる。
それにしても雪山の雪面に残る獣の足跡のなんと賑やかな事だろう、足跡の写真を撮っているだけでも楽しそうだ。
思いつくだけでもウサギ、狸、オコジョ、ネズミ、鹿、カモシカそして本土リス等等・・・。
夏山なら気付かれる事もなく深い緑の奥から敵の様子を窺っていることだろうに・・・・・・・・

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庚申山、一の鳥居を過ぎ七滝前の広場には猟師の車が数台駐車、相当な人数での猟らしい、昨年は解体した現場を目の当たりにして ひどくびっくりしたものだ。
滝の結氷が気になり雪に埋まった階段を下り滝下まで、去年ほどの見事な凍り付き具合ではなかったが デジカメに数コマ収めて元の広場に戻る。
水ノ面沢(七滝の上流)の左岸を雪に足を取られながら登って行くとまもなく登山道と合流、正月の登山者のトレースだろうか、 雪面にうっすらと残るその足跡を追って行く。
雪の量は脛ほどの深さ、時折深みに足を取られ難儀するものの何とか最初の木橋まで辿りついた、雪はサラサラで衣服にまとわり付く事もなく 快適だった。
雪上キャンプの場所を求めてそちこちうろうろ、大岩の在る所で尚且つ平面、そして水を得られる事。
丸っきりのビバークではないのだからゆったりとくつろげて終日陽が翳らない場所が良いのだが・・・・・・・・
格好のテン場が案外と登山道近くの沢辺にいつでもお出でよと言わんばかりに存在していた。
ただし少しばかりの難点が・・・・・・
なんと鹿の通り道だったのだ・・・・・・・。

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テントサイトには格好のその場所で暫らくのんびりし登山道に復帰、相変わらず脛から膝辺りまでの雪で登山道は真っ白・・・!。
登山道は右手の沢からはなれ徐々に高度を上げて行くのだが、 岩場の影に道が隠れ何も考えずに踏み込むとすっぽりと腰までも深く埋まり、抜け出すのに大変だった。
最初の丁石が左手に頭だけを出していた、丁石の脇には謂れを書いた看板が立ち無垢の雪面には何となく違和感・・・・・。


丁石=道標、1丁(約110メートル)庚申山の丁石は文久3年(1863)講中(庚申講)により立てられた。
足尾町遠下の旧磐裂神社を起点に猿田彦神社まで百十4丁、現在見られるのは一の鳥居から猿田彦神社跡までの数箇所のみ。
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鏡岩=「孝子別れの処」
吹雪で遭難した猟師が娘を嫁にやる約束をして猿に助けて貰い、父娘が涙の別れをしたという伝説が看板に説明されている。
猿田彦神社
昭和21年4月に消失、広場には庚申山の開祖、勝道上人、明治政府打倒を企てた大忍坊の石碑が立つ。
庚申山荘
1985年に立て替えた2階建てのログハウス。
   登山シーズンの週末をのぞき管理人不在。大人料金=2000、休憩 300円 


それにしてもその看板の裏側には、松木川の崩壊林道に赤く毒々しく書かれた例のあの三浦を名乗る男の落書きがへたくそな字で 記されており腹ただしかった。
鏡岩と言う大岩を過ぎ暫らく登って行くと吹き溜まりを避けようと思いつい獣道に逃げてしまった、ところが何故か道を見失い 立ち往生。
方角は分かっているのだが道をはずすとやはり面倒な事にもなりかねず、目印の赤いリボンを見つけたときにはほんとに嬉しかった。
案外と吹き溜まりが激しく仁王門、夫婦蛙岩の辺りなどはひどい状況だった。 巨岩帯を過ぎると道がやや緩くなりやがて舟石新道との分岐を過ぎ猿田彦神社跡に付いた、奉納された石碑も雪に埋もれ ただのまっ平、山荘の屋根が遠くに見え隠れしているのだが山荘までの雪の具合がまた悪くて腰まで埋まるほどのラッセルだった。
喘ぎ喘ぎ何とか山荘のテラスに付くと時計は既に午後13:50分。

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山荘の玄関を開け暫し休憩、晴れた青空なのに細かな雪がキラキラ輝きながら降り風の音も無く、只の静寂・・・ここは信仰の山、庚申山!。
山荘の玄関から眺める山の雪景色は最高だった。

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時間が有ればな〜・・・・・・
うだうだ思いながら六林班峠への道を見回すとやはり深い雪に埋まりこれ以上はほんとに無理。
後ろ髪を惹かれるような思いで下山開始、山荘の後ろには雪化粧の庚申山の岸壁が綺麗だった。 自らの踏み跡に足を合わせながら快調に下山、のぼりで迷った場所を確認すると何のことは無い、右にわずか1メートルも逸れてさえいれば 迷うこともなかったのに。
晴天の今日でさえこうだ、吹雪いていたら、靄っていたら本当にどうなる事やら。夏道を知っているから安心、とは行かないのが雪山と言う事か。
水ノ面沢の流れが登山道を渡る最初の橋で休憩、ガソリンバーナーのMSRは子気味良い音を立て湯を沸かし 1-17_i.jpg(92458 byte) 雪面の中で飲む暖かいコーヒーはすこぶる美味、ウマかった・・・・。
うどんとコーヒーで30分ほどくつろぐ、汗もひき西に傾いた太陽も尾根に消え陽射しの無い雪面はなんだか急に冷えてきた。


道具を仕舞い一の鳥居まで下山、広場では猟師達が車に集いやはり下山の準備中だった。
雪道をのんびりと下っていると先ほどの猟師の車が先を塞いだ、話しかけて来るので軽く会釈を返し猟の結果を聞いたところ 鹿を9頭撃ったと若い方の猟師が教えてくれた。
仲間の車を待っている間リーダーらしい年配の猟師に銀山平まで乗って行けと誘われ軽トラックの荷台に乗せてもらう。 荷台には猟師の道具と獲物の変わり果てた姿がビニール袋に押し込められ、共に揺られての道行きになんとも異様な感じだった。
鹿撃ちも岩魚釣も山菜採りも同じ山の恵みには変わり無い、只その時季や思いが一寸だけ違うだけの事だろう・・・・・・・。
狭く雪に凍りついた林道をいとも簡単に銀山平まで下山、(16:00)猟師達に礼を言って車に戻った。
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