ぬかるんだ林道にタイヤの跡、濃い緑の葉が被さりゴツゴツ石の道も朝の冷気を帯びて清清しい。
早い時間に未だ蝉も鳴かない、見上げれば青い空。
一の鳥居から七滝を横目に庚申川左岸に付いた旧道を歩いて見た。
持ち帰るのを忘れたかのように白い
碍子が崩れた道に落ちていた、岩肌の所々には針金なのか電線なのか見分けも付かない
程にボロボロなった線も見えた・・・・・。
蒸気機関による架空索道が建設され庚申川左岸には鉄索が張られていた事なんて知る由も無い、
根利山時代の遺産が時折顔を出してはびっくりさせる。
旧道は以前歩いた時とはまるで様相が変わり果て途中で断念、赤沢まで行けたらと単純に思っていたのだが・・・。
引き返し庚申川を遡行、獣道のように左岸右岸と途切れなく踏まれている、思ったようには岩魚も釣れまいに・・。
途中タモギ茸を確認、同じ場所で同じ茸。
ひょっとすると又今年もあの場所で大物との出会いが有るかも知れない、何と無しに楽しくなった。
きつい日差しに流れの奥まで透けている、碧い深淵に白く泡立つ水流。
両岸に覆い被さる大岩の肌にはびっしりと岩タバコが群生し、
それはまるで緑の鱗をまとった生き物の様でもあるし葉裏ごしに覗くと葉脈が大岩の血管にも見えた。
昼時なら・・・
夏空に映えるその青葉を摘んでラーメンの具材にするのに、もったいない!。
それにしてもこれほどの群生、
青紫の花が一様に咲いたらどんなに見事だろう。
流れを渉るごとに深緑色に輝く翡翠のような大岩が待ち受けていたら・・・・・。
4#8F2/1の安ロッドは少し硬めで振りづらくてラインの伸びがイマイチ・・・・
リールシートには使い慣れたマーキス#4、傷だらけで光沢を失ってはいるが信頼できる相棒だ。
結婚してまもなく
かみさんからのプレゼントがマーキス#4-5のリール。
ロッドはウエルナートラデッショナル7f6"#4-5のカスタムロッドだった。
当時の値で諸々の小物を入れると10万を云うに超えF.フィッシングはえらく高価な遊びだった。
爾来、殆ど遊びは渓流での水遊びのみ・・・・・・
夏空に少し渇水気味の庚申川、ポツポツ飛び出す岩魚の感触を楽しみながら赤沢近くまで来た。
この先は斜めの滝近くまでのゴルジュ帯だ、空を見上げると真っ黒な雲が南西方向から広がりつつあり
悩んだ末に撤退。
雨は今朝方見たタモギ茸を採取し終えて七滝直下の林の中を歩いているときに落ちて来た。
それはお供付きで・・・・ガリ・ガリガリ〜〜
俄かに薄暗くなり大粒の雨に打たれて木々の葉がざわめき出す、隠れる場所は何処にも無く
葉裏を眺めながら虫や蝉が羨ましく思えた。